クールな弁護士の一途な熱情
「……うん、気をつける」
そんな彼女に応えるように小さく笑うと、希美ちゃんは「ならよし」と納得した様子で歩き出す。
駅を出て、冬の日差しの下を歩いていく。
茶色いコートを着ても華奢な後ろ姿は、綺麗に伸びて美しかった。
かわいらしく真っ直ぐな彼女を、静が幼馴染として大切にしていた気持ちが少しわかった気がした。
……あんなふうに笑えるなんて、強いなぁ。
ううん、強く在ろうとしているだけかもしれない。
恋敵への言葉はきつかったけれど、健気にずっと静を想っていたのだから。簡単にふっきれないだろうこともわかる。
その心を思うと、またこの胸が痛む。
けれど、譲れない。譲っちゃいけない。
希美ちゃんと改めて話せたことで、背中を押された気がしてる。
幸せだからこそ、過去の出来事がチラついて、不安になったり期待が持てなかったりと心に影を落としてしまう。
だけど、信じよう。
永い間、私との思い出を大切にしていてくれた。そんな静なら、きっと大丈夫だって。