クールな弁護士の一途な熱情



その日の夕方。横浜駅で合流した私と静は、近くのレストランで食事を済ませた。

今日は静は事務所に車を置いてきたそうで、たまにはとふたりで手をつないでクリスマスのイルミネーションが輝く街を歩いた。



「ねぇ、果穂。行きたいところあるんだけど、いい?」

「別にいいけど……行きたいところってどこ?」



たずねるけれど、静は笑ってなにも答えず手を引く。

そして景色を見ながらふたりで歩いてきた先にあったのは、みなとみらいにある遊園地だった。



「これ乗りたいなって思って」



静が笑って指差すのは、この遊園地のシンボルともいえる巨大観覧車。

虹色にライトアップされた観覧車を見上げて頷くと、私たちはすぐにチケットを購入し、順番にゴンドラへ乗った。



冷え込んだ外から乗り込んだゴンドラ内は、暖かくてホッとした。



「観覧車なんて久しぶりに乗るかも。でもどうしていきなり?」

「12年前の約束、まだ果たせてなかったなってずっと思ってたから」



12年前の……?

一瞬考えてふと思い出すのは、夏休みの終わりのデートで観覧車に乗ろうと話していたこと。

まだ、ちゃんと覚えてくれていたんだ。

そのことが嬉しくて、笑みがこぼれた。



窓から下を見ると、一面にキラキラと輝く街の明かりがゆっくりと遠くなっていく。



「わぁ、綺麗。見て、向こうの方まで見える」



ふたりきりの小さなゴンドラの中、窓の外から目の前の静へ視線を向けると、静は見守るように優しく私を見ていた。


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