クールな弁護士の一途な熱情



「だから、今こうして果穂といられる日々が夢みたいで、幸せでどうしようもなくて、それなのにもっと欲張りになる自分がいる」

「欲張り?」

「うん。もっと一緒にいたいとか、毎日会いたいとか、離れたくないとか」



静はそう言って、小さく笑って私の目を見た。



「だから、一緒に住まない?」



まっすぐ見つめた彼から発せられたのは、思いもよらぬひと言だった。

一緒にって、それってつまり……。



「それって……同棲って、こと?」

「そう。もちろん都内寄りで、果穂の通勤しやすさ最優先で部屋探してさ」



すんなりと肯定してくれる彼に、驚きや嬉しさ、戸惑いが一気にあふれてうまく感情がまとまらない。



一緒に住まない、なんて嬉しすぎる。

けど、と続いて浮かんだ気持ちをこの際だからと素直にこぼした。



「……さすがに、私ももう30だし、同棲ってなると結婚とか意識しちゃうんだけど」

「いいよ、意識してよ」



それに対しても静はあっさり頷く。



「俺はもう、果穂のこと離すつもりなんてないから」



そして、一度手を離すとコートのポケットから手のひらほどのサイズの赤いケースを取り出した。

彼がそれをそっと開くと、中にはプラチナの指輪がひとつ輝いている。


< 197 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop