クールな弁護士の一途な熱情
「だから、今こうして果穂といられる日々が夢みたいで、幸せでどうしようもなくて、それなのにもっと欲張りになる自分がいる」
「欲張り?」
「うん。もっと一緒にいたいとか、毎日会いたいとか、離れたくないとか」
静はそう言って、小さく笑って私の目を見た。
「だから、一緒に住まない?」
まっすぐ見つめた彼から発せられたのは、思いもよらぬひと言だった。
一緒にって、それってつまり……。
「それって……同棲って、こと?」
「そう。もちろん都内寄りで、果穂の通勤しやすさ最優先で部屋探してさ」
すんなりと肯定してくれる彼に、驚きや嬉しさ、戸惑いが一気にあふれてうまく感情がまとまらない。
一緒に住まない、なんて嬉しすぎる。
けど、と続いて浮かんだ気持ちをこの際だからと素直にこぼした。
「……さすがに、私ももう30だし、同棲ってなると結婚とか意識しちゃうんだけど」
「いいよ、意識してよ」
それに対しても静はあっさり頷く。
「俺はもう、果穂のこと離すつもりなんてないから」
そして、一度手を離すとコートのポケットから手のひらほどのサイズの赤いケースを取り出した。
彼がそれをそっと開くと、中にはプラチナの指輪がひとつ輝いている。