クールな弁護士の一途な熱情
パタンとドアが閉じられ、ひとりになったその部屋で、私はトップスを脱ぎタオルで体を拭く。
……きっと、本気で断ろうと思えば断れる。
静は無理強いをさせるようなタイプではないし。ああして丸め込むような言い方をするのは、私が迷っているのをわかってなのだろう。
でもさっき静が言っていた通り、少しでも働けば家に対しての居辛さもなくなるだろうし……。
ひとりでため息ばかりついて毎日を過ごすよりは、マシかもしれない。
それに、まるで運命のようにも思えるこの再会になにか意味があるんじゃないかって、希望にすがりたい自分もいる。
そんなことを考えながら花村さんが用意してくれた服に袖を通す。
黒のシンプルなワンピース。それを着ると、ようやくびしょ濡れの状態から解放された。
「花村さん、着替え終わりました……」
部屋から顔を出し廊下を見る。
ところがそこにいたのは、花村さんではなく静だ。
壁によりかかっていた静は、私の声にこちらを見た。
「って、なんで静がここにいるのよ」
「花村さん電話対応中だから。俺が代わりに待ってた」
にこりと笑って言う静に、私は部屋から出てドアを閉めるとその顔をじろりと見る。
「で?誰がバイトするなんて言ったのよ」
「しないの?」
「しないとは言ってないけどするとも言ってない!」
笑みをみせるその顔は、私の答えなどわかっているようだ。
その予想通りの答えを出すのはちょっと悔しい……けれど。