クールな弁護士の一途な熱情
「……短期でいいなら」
素直に『する』とは言わないものの、拗ねたように小さくつぶやく。
それに対して静は、それ以上問うことなく、まるでそのひと言で満足とでも言うかのように笑った。
「うん、よろしく」
瞳を細め、薄い唇の端をそっと上げた笑顔。
その表情はあの頃と全く変わらなくて、ふたりを一気に12年前に戻らせた気がした。
何年経っても、いくつになっても変わらない。
この街に漂う潮の香り。
夏の日の太陽の眩しさ。
そして彼の笑顔と、それを嬉しいと思う自分。
懐かしさに惹かれて、現実から逃げているだけなのかもしれない。
だけど今は、それでいい。
ほんの少しでも、この心が軽くなるのなら。