クールな弁護士の一途な熱情
「別に、過去のことだし。今更言う必要もないでしょ」
そっちがそういうつもりなら、と冷めた言い方で静から顔を背けた。
「……過去のこと、ね」
すると静はつぶやいて、私のデスクに左手を置く。
私は顔を背けたまま前を向くけれど、彼が近づく気配を感じて緊張がはしる。
「俺は今でも、入江のこと好きだけど」
そして、耳の近くでささやかれたひと言。
私だけに聞こえるように、耳から入り込む低い声は瞬く間に全身の熱を上げる。
今でも、なんて、どんな顔をして言っているのだろう。
真剣な顔?それとも、からかうような笑み?
わからない、知りたい。
だけど、きっと真っ赤に染まっているであろう自分の表情を見られることはいやだ。
その一心で、私は思い切り立ち上がる。
それと同時に、肩に静の顎がゴンッと当たった。
「いっ!」
私が突然勢いよく立ち上がったせいで、静は避けられなかったのだろう。
痛そうな音と声がした。けど恥ずかしさのせいで、心配する余裕もない。