クールな弁護士の一途な熱情



「見てください、発色もいい感じで」

「本当だ。入江が企画持ってきた時にはまたすごいことを言い出したと思ってたけど、実際この色数見ると圧巻だな」



上原さんはそう笑うと、子供を褒めるように私の頭をぽんぽんと撫でる。



「入江にはこのダークレッドとか似合いそう」

「本当ですか?」

「あぁ、入江は赤系の口紅が似合うからな」



並んだサンプルの中から深い赤色を一本手に取ると、私に手渡した。



「上原課長、ちょっといいですか?」

「あぁ、今行く」



部屋の外から社員に呼ばれた上原さんは、返事をすると私に顔を近づける。



「……仕事終わったら、小会議室で」



そしてそう小さな声で耳打ちすると、ふっと笑ってその場をあとにした。

彼が去って、私の手のひらにはダークレッドの口紅が残る。



……この色に、しようかな。



昔は、赤い口紅なんて自分には似合わないと思ってた。

だけどもうここ2年近く、私は毎日赤い口紅だ。



だって、いつも彼が褒めてくれるから。

私はこの色ばかりを手にとってしまう。






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