クールな弁護士の一途な熱情
4.名前
静と付き合ったのは、高校三年生の夏。
7月頭から8月末までの2ヶ月弱という短い期間だった。
その間、夏休みも私はほとんど補習とバイトで、彼は部活や塾と、ふたりの間には恋人らしいことは大してなかった。
電車通学の私と、自転車通学の彼。
学校から駅までの道のりを時々一緒に帰っても、彼の手は自転車を押すことでふさがっており、手をつなぐこともなかった。
教室ではそれなりに普通に話せるのに、ふたりきりになるとお互い黙ってしまう。
そんな彼との無言の時間すら、今思うとくすぐったかった。