クールな弁護士の一途な熱情
5.夕陽




静と付き合っていた頃、デートというには大げさかもしれないけれど、一度だけふたりで海に行ったことがある。



それは付き合って1ヶ月ほどが経った8月頭。

女子バスケ部は夏の大会で負け、私たち3年生は引退した。



それまで部活ばかりをしていた私は、その毎日がなくなるということに対しうまく気持ちが切り替えられなかった。

補習を受けても、友達と話しても、気持ちが自然と沈んでいた。

そんな私に、ある日の補習帰り、静は言った。



『入江、いいもの見せてあげるから自転車の後ろ乗って』

『え?いいもの?』



言われるがまま彼の自転車の後ろに乗ると、静は自転車を漕ぎ出した。

駅前を過ぎ、通りを抜けて、自転車は徐々に海岸方面へ進んでいく。



『静?ちょっと、どこ行くの?』



聞いても静は答えてくれなくて、ただひたすらペダルを漕いだ。



そして20分近くかかっただろうか。

やってきた先はひと気のない海岸だった。



砂浜の先に広がる大きな海。その水面を15時の太陽が照らしていた。

自転車を停めて砂浜に降りると、スニーカーの底が歩くたび沈むのを感じた。


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