クールな弁護士の一途な熱情
「なに盛り上がってるの?」
「コスメの話。いい色でしょ」
「うん確かに、壇さんその色よく似合ってる。じゃ、仕事しよっか」
壇さんが見せるグロスに、静は笑って言いながら私のデスクに書類を置いて部屋を出ていく。
その様子はいたっていつも通りだ。
昨日のタクシーでの私の発言、聞こえてなかったのかな。それならそれでひと安心。
そう安堵の息をこぼし、私も仕事にとりかかる。
よかった、静に聞かれていなくて。
まぁ、上原さんのことをたずねられたところで、元カレだなんて言わなければわからないだろうし、誤魔化してしまえばいいだけなんだけど。
いや、私のことだからすぐバレてしまいそうな気もする。
そんなことを思いながら、今日の予定を確認するべくホワイトボードを見る。
今日は、花村さんと壇さんはお昼から外出で直帰。
静は11時と13時から1時間ずつ無料相談が入っていて、それ以降は珍しく来客なしだ。
日によっては1日に何人もの依頼人が来て繰り返しお茶出しをしているのに。
スケジュールを確認しながら、そういえば、と以前から思っていたことをふと思い出す。
「相談とか依頼って女性が多いんですか?」
「なによ、いきなり」
「いや、いつもお茶出ししながら思ってたんですけど、男性より女性のほうが圧倒的に多い気がして」
そう、ここに来てから毎日依頼人が来るたびお茶出しをしているけれど、そのほとんどが女性だ。
こんなにも女性ばかりが集まるなんて、どうしてだろうと思っていた。
その疑問をなげかける私に、花村さんはうーんと考える。