クールな弁護士の一途な熱情
「大人ぶった赤より、そっちのほうが絶対いい」
「そう、かな」
「うん。背伸びしない、あの頃と変わらない笑顔の入江が一番綺麗だよ」
背伸びをしない、あの頃と変わらない私が……。
赤い口紅を『大人っぽくていい』と褒めてくれた上原さんとは、真逆の言葉。
その言葉がじんわりと胸の奥に染み渡った。
私は、今の自分が情けなくて嫌いだ。
だけど、静はこんな私を見ても微笑んでくれる。
弱さも脆さも、優しさで包んでくれる。
それがただ、嬉しくて。
言いようのないいとしさを感じさせた。
「ありがとう……」
口紅を受け取り自然とこぼれた笑みに、彼も嬉しそうに笑う。
そんなふたりを、夏の夕日は今日も赤く照らした。