クールな弁護士の一途な熱情
6.体温
海辺で彼がくれた口紅は、夕陽に溶けるようなコーラルオレンジの色。
それは今まで自分に押し付けていた色とは真逆で、鏡に映った自分はどこか柔らかな表情に見えた気がした。
水曜日の朝。
今日も身支度を終えた私は、洗面所の鏡の前でそっと口紅を引いた。
いつもと変わらないブラウンのアイシャドウに、ボリューム重視のマスカラ、濃く引いたアイライン。
ひとつ違うのは、唇に色づく色が赤色ではなく、血色の良いコーラルオレンジ。
それは、昨日静がくれた新しい口紅だ。
……うん。確かにこっちのほうがナチュラルな印象だ。
思えば昔、初めて買った口紅もこういう色だった。
あの頃はこの色が自分に合うと自信を持っていたはずなのに。
気づけば彼に勧められるがまま身につけた色に縛られていた。
その色が、自分に合うかもわからずに。
いつの間にか、自分に合うものすら自分で見つけられなくなっていたんだ。
それを思い出させてくれたのは、静の優しさ。