クールな弁護士の一途な熱情



「入江、今日ちょっと俺に付き合ってくれる?たまには入江も外出しよう」

「外出?」



突然の彼からの提案にキョトンと首をかしげる。



「うん。外回り行くのに荷物も多いから補佐も欲しいし」



……補佐、なんてそれらしい言葉を使うけれど、つまりは荷物持ちがほしいということ。

そうですか、と乾いた笑いで了承した。



「よし、そうと決まれば行こう。今資料持ってくるから」



静はそう言って一度所長室へ向かって行く。

ふたりその場に残されると、花村さんは口を開いた。



「伊勢崎先生から聞いたわよ、昨日大変だったんですって?」

「大変というか……伊勢崎先生に、迷惑をかけてしまって」

「あら、迷惑だなんてひと言も言ってなかったわよ。むしろ果穂ちゃんがかわいくてしょうがないみたい」



え……?

その言葉の意味を問うように花村さんを見ると、彼女は眼鏡の奥の目を細めてふふとおかしそうに笑う。



「昨日の今日であの人がまた来たらと思うと心配、って言ってたから。それもあって自分の目の届くところに置いておきたいんだと思う。また来たら私と都子でどうにかするから、今日は外の空気吸ってきて」



花村さんはそう言って私の背中をぽんと軽く叩いた。



心配……だなんて。

荷物持ち、なんていうのは後付けで私のために外出しようと提案してくれたの?

そこまで自分のことを考えてくれる彼の気持ちが、また嬉しい。


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