クールな弁護士の一途な熱情
それからやってきたのは、駐車場からほど近くにある3階建てのビル。
『鷹島建設』と書かれたその会社のドアを、静は慣れた様子で開けた。
「こんにちは、弁護士の伊勢崎です」
「伊勢崎先生。お世話になります、奥へどうぞ」
女性社員に案内され、奥にあるガラス張りの応接間に入る。
そして担当者だという男性社員が来て、静は仕事の話を始めた。
まずは企業との契約状況の確認から、最近なにかトラブルはなかったか。
現在の社内の勤務状況や業界事情などのヒアリングをおこなっていく。
けれどその間静は常に業務的ではなく、にこやかに、親しげに話を進めていく。
相手も心をひらけるような、そんな和やかな雰囲気を作れるのは静の武器だ。
「その点については折衷案を設けた方がいいかもしれないですね。万が一のこともありますし」
「そうですね。やっぱり伊勢崎先生に言われると説得力があるなぁ」
問題に対しての静からのアドバイスにも、男性社員はすんなり受け入れ頷く。
ひと通りの話を終えたところで、出されたまま手をつけていなかったお茶を静はひと口飲んだ。
すると男性社員は、書類から顔を上げ私に目を止める。
「それにしても、伊勢崎先生が女性連れとは珍しいですね。あ、もしかして奥様ですか?」
お、奥様!?
まさかの発言に思わず「え!」と声が出る。
「まさか。秘書ですよ」
けれどそれに対して、静はお茶を飲みながら落ち着いた声で否定した。
まさか、って。そうだけどさ、なんか失礼。
静の答えを疑うことなく、男性社員は頷き笑った。