クールな弁護士の一途な熱情
「でも素敵な弁護士先生につけていいですね、秘書さん。伊勢崎先生、うちの女性社員たちにもすごく人気あるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。伊勢崎先生がいらっしゃると女性社員たちがみんなソワソワし始めるんですよねぇ」
男性社員の言葉にチラリと辺りに目を向けると、ガラスの向こうにあるオフィスからは女性たちの視線がこちらへ熱心に向けられていた。
ほ、本当だ……。
それは、静に対してのうっとりとしたものや狙うような眼差し。
それとともに、私に対して『誰よあの女』というような厳しい眼差しも感じられて背中がチクチクと痛い。
「でも伊勢崎先生まだ独身なんですよね?うちの社員の誰かとお見合いとかどうですか?」
「あはは、鷹島建設さんは美人ぞろいで僕にはもったいないですよ」
こういう会話にも慣れているのだろう。静は笑って軽く流す。
それから軽く会話も終え、「ではまた」と私と静は礼をして応接間を出る。
そしてオフィスを出ようとした、その時。
「伊勢崎先生!ご相談が!」
「私も!お話したいことがあって!」
それまでこちらの様子をうかがっていた女性たちが、一気にこちらへ押し寄せる。
キャーキャーと女性たちは静を囲み、一歩後ろにいた私はあっという間に輪から追い出された。
す、すごい迫力……。みんな全力だ。
静は苦笑いをしながらも、輪の外で圧倒される私に気づく。