クールな弁護士の一途な熱情
「ごめん、入江。先外出てていいから」
そして私を外へ出させると、女性たちの話へ耳をかたむける。
さすが、先ほど男性社員が言っていた通りモテモテだ。
でもああして囲む女性に対してもあしらうことなく、ひとりひとり話を聞いてあげちゃうんだろうな。
仕事にもつながるかもしれないことだし、それがなくても優しい人だもんね。
……私への優しさも、それと同じ。
そう思うと胸がチクリと小さく痛むのはどうしてだろう。
建物を出て、静を待つべく近くにベンチでもないかなと辺りを探す。
数メートル先の道の端にベンチがあるのを見つけ、そこへ向かい歩き出した、その時だった。
「っ……果穂!」
突然名前を呼ばれると同時に、背後から肩を掴まれた。
え……?
驚き振り向くと、そこにいたのは袖をまくったシャツにスラックス姿の彼……上原さんだ。
「上原、さん……?」
どうして、彼がここに?
あまりに突然のことに、驚き息が止まりそうになる。
「なんで、ここに……」
「売場巡回行った帰りにたまたま見かけて……果穂こそなんでここに?実家に戻ってるって噂で聞いたけど」
そうだ、この近くにはアンセムの売り場が入っているデパートがある。
時折売場巡回に出ることはあるけれど、まさか、このタイミングで彼と会うなんて。微塵も想像していなかった。
微かに震えだす手で、バッグの持ち手をぎゅっと握る。
「ていうか、なんで電話も出ないんだよ。この前もかけたんだけど」
「……今更、あなたと話すこともありませんから」
ぼそ、と答えた声に、上原さんは不機嫌そうに顔を歪めた。