クールな弁護士の一途な熱情
「やっと仕事を覚えたところで本当にすみません。ですが、産休いただいたあとは必ず復帰しますので……」
喜び浮かれるでもなく、一番に申し訳ない顔を見せる宮田さんは、その様子の通り入社当時から評判のよい子だ。
私自身も一緒に仕事をする中で、彼女の性格のよさと真面目さはよく知っている。
先ほどまで騒いでいた女性社員たちも彼女相手となると責める気になれないのだろう。
「いいのいいの、そんなの気にしないで。おめでたいことなんだから」
「そうそう、今は体を一番に考えて!」
続々とフォローにまわる声がかけられた。
若くてかわいくて、性格もよくて……そりゃあ、上原さんも落ちるわけだ。
……って、ちょっと待って。
待って待って待って。
結婚?妊娠?
なにこれ、ドッキリ?
上原さんの彼女って私だったよね?
つい昨日だって、キスしたばかりだよね?
なのに今私の目の前では、上原さんとあの子が拍手に包まれ幸せな笑顔を浮かべている。
なにこれ、どういうこと。
だって、大事な話があるって、言って……。
あぁ、頭の中が真っ白になっていく。
なにも考えられない。
悲しいとか、感情すらもついてこない。
誰か、悪い夢だと言って。
その場に立っているだけで精いっぱいで、涙一滴すらも出なかった。