クールな弁護士の一途な熱情
大きな通りから一本入り少し歩いてきた先には、広めの公園があった。
背の高い噴水が見た目にも涼しげな公園内は平日の午前中ということもあり人はまばらだ。
敷地の端にある、木陰になったベンチに座ると、吹いた風がそっと毛先を揺らす。
その風の心地よさに息をひとつ吐くと、自販機で飲み物を買ってきてくれた静が小走りで戻ってきた。
「お茶とコーヒー、どっちがいい?」
「じゃあ、お茶で」
小さなペットボトルのお茶を受け取りひと口飲むと、先ほどまでの息苦しさはすっかり落ち着いた。
昨日みたいに過呼吸を起こさなくてよかった。
……でも、ダメだな。ショックを受けると過呼吸を起こしやすくなってるみたい。
もっとしっかりしなくちゃ。
手の中のペットボトルをぐっと握っていると、静は隣に腰を下ろし缶コーヒーの口を開けた。
そしてひと口飲んでから、顔を前に向けたままつぶやく。
「……あれが、『上原さん』?」
「え……」
なんで、知って……。
一瞬驚くけれど、そういえばこの前タクシーで彼の名を呼んでいたことを思い出した。
あれから特に聞いてはこなかったけれど、やっぱり聞こえていたんだ。
気まずくて『うん』と返事すらできずにいると、それが肯定と伝わってしまったらしく、静は納得したように頷く。
「上司、なんて言ってたけどあれ元カレでしょ。しかも向こうの浮気で終わって、それが休職にかかわってるってところかな」
「うっ……」
鋭い。全て合っている。
言い当てられて唇を噛む私に、静は笑って頭をくしゃくしゃと撫でた。