クールな弁護士の一途な熱情
今はつらくても、いつか時間が経てばどうにかなる。傷は薄れていくはずって、思ってた。
だけど、そんな私の変化は他の人から見ても明らかだった。
『入江さん、最近やばくない?』
『やっぱりあの噂本当だったのかな。入江さんと上原さん、ついこの前まで付き合ってたって』
『え!ってことは上原さん二股!?それで子供できた方に決めたってわけかー』
誰に言ったわけでもない。だけど、付き合っていたことに気づいていた人もいたのだろう。
噂は瞬く間に、社内中に広まった。
それは当然上原さんの耳にも入ったようで、妊娠中の彼女の耳に入る前にと彼がとった行動は、噂の元である私を追い出すことだった。
『……ごめん、これ以上騒ぎになる前に仕事辞めてくれないか』
『は……?』
『お前最近ミスも多いしさ、体調も悪そうだし。これ以上その状態でお前がいると、余計変な噂になる』
ミスや体調だなんてただの言い訳で、その言葉の最後の部分だけが本心なのだろうことは明らかだった。
確かに、体調面も精神面もギリギリだった。
けど、その言葉に頷けるはずもなかった。
『騒ぎを収めるためだけに、これまで私がしてきた仕事を捨てろっていうんですか……?元々はあなたのせいなのに、私から仕事まで奪うんですか!?』
仕事を辞めた方がラクになるなんて、わかってた。
でもどんなに苦しくても悲しくても、仕事だけは休まなかった。
だって、企画部の仕事には誇りを持っていたから。
コスメを使う人のことを考えて、悩んで商品を生み出してきた。その日々だけは簡単に捨てられなかったから。