クールな弁護士の一途な熱情
小走りでやってきたのは、横浜駅。
日曜日ということもありいつも以上に人が多い中、西口前の広場へ行くと、そこに立っていたのは私服姿の上原さんだ。
彼は私を見つけると「お疲れ」と小さく手を挙げた。
静の胸で泣いた日、気づけばいろんなことがすっきりとしていた。
胸につかえていた苦しさも、消化できずにいた悲しみも、全て溶けて消えた。
心は軽く、久しぶりにぐっすりと眠れた翌朝。私は上原さんに電話をして、一度会ってゆっくり話をすることにした。
しっかりと心に据わった、自分の気持ちを伝えるために。
「どこか入るか?」
「いえ、ここでいいです。すぐ終わりますから」
人が行き交う道の中、端に寄り私と彼は向き合って立つ。
上原さんも先日と比べてだいぶ冷静なようだ。私のそばに弁護士がいる、という意識があるからかもしれない。
こうして目と目を合わせて立つと、別れたあの日を思い出してまた息が苦しくなる。
だけど、背中をそっとさする静の手を思い出すと、不思議と呼吸がラクになった。
勇気を出して、自分の素直な気持ちを言葉にするんだ。
「私、仕事辞める気ありませんから」
喧騒の中、落ち着いた声ではっきりと言った言葉に、上原さんはひどく驚く。
「え……」
「私は商品企画部の仕事が好きで、今まで頑張ってきたことも投げ出したくないから。だから、なにを噂されようが残ります」
ずっと頑張ってこれたのは、この仕事が好きだから。
しんどい時も、商品を手にとってくれる人の笑顔が消えないから。
だから、投げ出したくない。
強い意志を持ってしっかり目を見て言った私に、上原さんは本気を感じたのか。以前のように『辞めてくれ』と口にすることはなかった。