トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「じゃなかったら誘ったりしないって。映画ならあの子連れて行っても別に害ないでしょ?」

害という言い方をしたエレナに苦笑いを浮かべる。

「害っていうのは……ちょっと……」

「ん?だって、アイツマジで害しかないじゃん!」

エレナは平然と言ってのける。

「で、映画観終わったらあの子とバイバイして3人でご飯食べよっ?」

「うん……」

映画を割引料金で観たいが為に薫子を利用しようとするのはどうなんだろう。

それに、『あの子』とか『アイツ』っていう呼び方もなんだか冷たい様に感じる。

あたしは薫子のことが苦手だ。

だから、薫子から離れようとした。

でも彩乃もエレナもあたしの考えとは違うようだ。

薫子を傷付けることは気にしていない。

むしろ、傷付けてもいいと思っている。

人としての道理に反する行為をみずから好んで選択しているような気がする。

「電子チケットも彩乃が買ってくれたって。あとでお金払わないとね」

「うん。そうだね」

「でも、彩乃もズルいところあるよね」

「どうして?」

「サイトから電子チケットの申し込みすると彩乃に特典があるみたい。ポイントも貯めてるみたいだし」

「へぇ。そんなのがあるんだ」

「彩乃はあたしがチケットとってあげるって偉そうに言ってたけど、どうせ4人で行けば割引きにもなるし映画館行ってから買ってもよくない?」

「あー、そうだね。でも、電子チケットなら確実に席も取れるしいいと思う。彩乃も気を遣ってチケットを取ってくれたんだと思うよ?」

「まあね」

エレナは少しだけ不満げな表情を浮かべていた。

あたしはそれに気付かないふりをして笑顔を浮かべた。

どうしてだろう。

なんだかモヤモヤする。

今まで3人でうまくやっていたのに。

それなのに、どうして。

あたしは狂いそうになっている歯車から目を反らして気が付かないふりをした。
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