トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「ただいま」

真っ暗なアパートの一室の扉を開けて中に入る。

テーブルの上には【仕事で遅くなります。今日学校から電話がありました。あとでちゃんと話を聞かせてね】という母の置手紙。

父が事故で亡くなった後も母は女手一つであたしを大切に育ててくれている。

夜遅くまで必死に仕事をしてあたしを高校にも通わせてくれている。

父を失った後、まだ若く綺麗な母には再婚という道だってあったはず。

でも、母はその道を選ばなかった。

『エレナの幸せがお母さんの一番の幸せ』

父が亡くなってすぐ、母は笑顔を浮かべながら気丈にそんな言葉をかけてくれた。

そのとき、あたしは思った。

母に迷惑をかけることだけはしてはいけないと。

母があたしを思ってくれている以上に、あたしも母が好きだから。

今朝のこともきちんと母に話さなくてはならない。

このまま逃げていても、母を心配させるだけだ。

パパ活だって本当はやめなくてはいけないと分かっている。

パパ活は簡単にお小遣いを手に入れられるけれど、リスクだってある。

ちゃんとしたバイト先も見つけなくてはならない。

母にパパ活のことがバレたらきっと悲しむに違いない。

大切な母を傷付けてはいけない。

あたしは母からの置手紙をギュッと胸に抱きしめた。
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