トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
『どうしたの?そんなに怖い顔して』

平然とした顔で自分の席に座っている薫子の机を両手で叩く。

『言い逃げなんてズルいでしょ?』

『別に逃げてなんていないわ』

『誰が……』

『なぁに?』

『誰がうちのお父さんの事故の話をしたの?』

『それは私の口からは言えないわ』

ヘラっとした笑みを浮かべた薫子にいら立ちが募る。

『言いなさいよ!事故の話は梨沙と彩乃しか知らないの!どっちがアンタに話したのよ!』

大好きだった父の事故はあたしの心に今も深い傷となって残っている。

父がいないことで今までさんざん辛い想いや悲しい思いをしてきた。

上辺だけの同情をされるのが心底苦痛だった。

でも、あたしは高校に入って仲良くなった梨沙と彩乃にだけは父の話をした。

二人ならあたしの心の傷を受け入れてくれるような気がしたから。

親友だって胸を張って言えたから。

だから話したのに……。絶対に人には言わないでってお願いしたのに。

それなのに。
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