トモダチ地獄～狂気の仲良しごっこ～
顔をあげると、そこには困ったような表情を浮かべる梨沙と彩乃が立っていた。


「昨日のことなんだけど……」

「あたしも彩乃もエレナのお父さんのことを薫子に話したりしてないの。信じてもらえないかもしれないけど、本当にあたし達じゃないから」

彩乃の言葉に続くように梨沙がそう言った。

あたしは二人の姿を黙ってジッと見つめた。

昨日までは正直あたしを裏切った二人を許せないとまで思った。

でも、落ち着いて考えると二人が簡単にバレる嘘をつくはずがないことに気が付いた。

となると、嘘をついているのは薫子かもしれない。

父の事故のことであたしを煽り、疑心暗鬼に陥らせようとした可能性もある。

あの子はどういうわけか梨沙と親友になりたがっている。

自分が梨沙と親友になるためにあたしを排除にかかっている可能性もある。

「もういいよ。あたしも、二人のこと疑って勝手に怒って酷いこと言ってごめんね」

「エレナ……」

ホッとしたように梨沙が表情を明るくする。

「彩乃もごめん。これ、こないだの映画代と……それと前に借りてた分のお金。足りなかったら今度また返すね」

たけちゃんに昨日もらったお金を差し出すと、彩乃は「あたしもひどいこと言ってごめん。ありがとう」と素直にお金を受け取ってくれた。

これでひとまずは一件落着。また３人で平和な日々を過ごそう。

そう思っていた矢先、「おはよう」と微笑みながら薫子があたしの席へやってきた。

梨沙と彩乃は互いの目を見合わせて困ったような表情を浮かべた。

きっと二人もあたしのせいで担任にあれこれ問いただされ、叱られたはずだ。


あたしは返事をすることなく黙って薫子を見上げた。

昨日のことなんてさもなかったかのように平然としている薫子をあたしは睨み付ける。
< 136 / 221 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop