トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「エレナに伝えていた情報は全て嘘だよ。僕がなりたかった姿、つまり理想の自分になりきっていたんだ。君はまんまと信じてくれた。心地が良かったよ、君が僕を慕ってくれて」

「全部、嘘……?」

耳に届いた自分の声がかすかに震えている。

「あぁ。もちろん、名前だって違うよ」

今、目の前にいる男が得体のしれない恐ろしい存在に変わる。

ジリジリとあたしとの距離を詰めてくるたけちゃん。

思わずバッグを掴んでソファから立ち上がる。

「どうしてそんな嘘を……?」

「どうして?そんなの決まってる。本当は無職のニートで普段は自室に引きこもってゲーム三昧なんて言ったらエレナはこうやって会ってくれたかい?車だって家だってお小遣いだって全部実家の両親が工面してくれた。こうやってエレナに贅沢をさせてあげられるのも僕の両親の援助があったからだ」

「そんな……」

「本当はずっとこのままの関係を続けたいと思っていたよ。でも、エレナとホテルに入る写真を見た両親が怒り狂ってしまってね。僕には兄もいるんだ。僕とは違って出来のいい兄貴が。僕がそんな兄貴の足かせになるなら縁を切ってやるって言われてね。それで今朝、かっとなって……ね。刺しちゃったんだ」

たけちゃんが不気味な笑みを浮かべる。
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