トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
どうして彩乃が怒っているのか全く理解できない。

ダメだ……。体に力が入らない。

あたしの体はズルズルとソファから滑り落ちる。

どうしてよ。あたしが何をしたっていうの……?

パパ活していたことに罪悪感はある。

でも、あたしは人に迷惑をかけているわけでも誰かを傷付けているわけでもない。

あたしだけが悪いの?あたしだけが秘密を抱えていたって思ってんの?

ねぇ、彩乃。アンタは何も悪いことしてないわけ?

あぁ、もう何もかもが気にくわない。

薫子をあたし達のグループに引き込んで滅茶苦茶にしたのは梨沙だ。

梨沙が余計なことをしなければこんなことにはならなかったかもしれない。

いつも偽善者ぶっていい子ぶりっこして本音を見せようとしない梨沙に今さらながら腹が立つ。

二人への怒りと憎しみをごちゃまぜにした真っ黒い感情が込み上げてくる。

イライラが頂点に達する。

ねぇ、彩乃。あたし、本当は知ってるんだから。

あの秘密を……――。アンタの、秘密。

ずっと黙っていてやったのに、この仕打ち?

女の友情ほどもろく儚いものはない。

あたしは必死の思いでスマホを掴んで画面をタップした。


なんとか送信し終えたとき、電源が切れたのかスマホの画面が真っ黒になった。

画面に映る自分の顔は怒りに打ち震えた鬼のようだった。

徐々に意識が遠のいていく中、「エレナ、お待たせ」とたけちゃんが微笑む。

たけちゃんが力の抜けたわたしの両足首を掴み、引きずっていく。

あと少しに迫った地獄への扉。

瞼を開けようとしても自然と閉じてしまう。

そのとき、瞼に浮かんだのは薫子の不敵な笑みだった。
< 158 / 221 >

この作品をシェア

pagetop