トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
今まで声をかけられていても彩乃の方を見ずに話を聞いていた薫子はゆっくりとした動作で彩乃に目を向けた。

その視線はなぜか冷ややかだ。

「部活なんてやって将来の役に立つの?」

「えっ?」

「しかも、バレー部って朝練までしてるでしょ?朝からスポーツなんてするものじゃないわ。汗臭くてたまらないし。周りの迷惑っていうものを考えたことあるのかしら?」

彩乃が固まる。

薫子……何言ってるの……?

あたしとエレナも不穏な空気を察して表情を固くした。

「今後プロになってその道でお金を稼げる可能性はゼロに等しいと思わない?それなのにどうして汗水たらして部活に打ち込むの?それが理解できない。疲れて帰ってきて勉強なんてはかどるはずもないし。部活に入ってる子って成績悪いもの。それってそういうことでしょ。あなたも部活なんてやめたら?」

「ちょっと、やめなよ。それって頑張ってる彩乃に失礼でしょ?」

エレナに諭された薫子は不服気だ。

呆れたようなさげすんだ目をエレナに向ける。

「失礼?だって本当のことを言っているだけだもの。違う?」

「それってあなたの考えでしょ?どんな考え持ってても構わないけど、それを人に押しつけるのはよくないと思うよ」

「私は意見なんて押しつけてないから。本当のことを言ってるだけ」

「それが意見の押しつけって言うんでしょ!」

「類は友を呼ぶのね」

「は?どういう意味!?」

「――ごめん、もうやめよう!部活の話なんてしたあたしが悪かったの!今の話、なしにして!」

たまらず彩乃が声を上げて二人の間に割って入った。

「うん。なんかごめんね……」

そう言って気まずそうに謝ったエレナとは対照的に薫子は勝ち誇ったような満足げな表情を浮かべている。

ハァとあたしは心の中で盛大にため息をついた。

明らかに悪くなってしまった場の雰囲気に薫子は気付いていない。

こうなってしまった原因は薫子にあるのは明白なのに、薫子はそんなことを気にかける様子は一切ない。

結局、そのあと、誰も言葉を発しようとはしなかった。

なんだか薫子と一緒にいると具合が悪くなる。

頭痛がして眩暈までしてきた。

あぁ、ダメだ。ちゃんと薬を飲まないと。

あたしは痛むこめかみを抑えながら小さくため息をついた。
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