トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
常にイライラしていて周りの人間を羨んだり僻んだりした。

その歪んだ感情を後輩に向けてしまった。

『どうしてそんなミスするの!?そんな簡単なボールも拾えないなんて何年バレーやってるの?アンタそれでもレギュラー!?』

あたしはターゲットを決めてみんなの前で晒上げにした。

その子は1年生の真緒という子だった。

大人しくてなんでも言うことを聞くタイプの子。闘争心が見えない割にそこそこバレーもうまく背は部内でも1、2を争うぐらい大きかった。

小学生のときからクラブチームに入り、優秀な成績を収めていた真緒。

先輩を押しのけてレギュラーになった真緒のことをよく思っていない3年もあたしの言葉に続いた。

『そうだよ。アンタ、さっきからミスばっかじゃん!真面目にやれよ!!』

レギュラーにするかどうか決めたのは顧問だ。

実力があったから真緒はレギュラーになれたのだ。

分かっていたのに、あたしは自分を止められなかった。

そして、周りの人間もあたしに加勢し、真緒をいびった。

何かにつけて真緒のミスを全員の前で指摘して恫喝し続けると、真緒は日に日に笑顔を無くしていった。

練習試合でもミスすることを恐れてかダイナミックなプレーが出来なくなった。

その日の試合は真緒のせいでボロ負けだった。

相手に点数が入るたびに真緒は顔を引きつらせて今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。

そのとき、自分の中に不思議な感情が芽生えた。

試合に負けたのは悔しい。でも、なんだろう。この気持ち。

真緒が困ったような顔をすればするほど気持ちが晴れる。

真緒を痛めつけてやったという事実にあたしの心は弾んだ。

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