トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「……――の。彩乃?」

ハッとして顔を持ち上げると、隣にいる薫子がくすりと笑った。

「大丈夫?顔が真っ青よ?」

「う、うん……」

「エレナのこと考えていたの?それとも、自分の中学時代のこと?」

薫子の言葉には明らかなる悪意があった。

「別に。今日の朝練は中止になりそうだし、早めに教室行くわ」

あたしの中学時代のことをどうやってエレナは知ったんだろう。

それに……。そこであたしはある疑問を薫子にぶつけた。

「ねぇ、どうしてか薫子はエレナがパパ活をやってるって知ってるの?」

あたしがエレナのパパ活を知ったのは本当に最近のこと。

エレナが見知らぬ男性とともに仲良さそうに歩いている姿を部活帰りに目撃したことがあったからだ。

エレナに父親がいないことは知っていた。

そのとき、ピンっと来た。エレナは放課後毎日バイトをしていると言っていたけれど、本当なバイトではなくパパ活をしていると。

どこでバイトしているのか尋ねてもエレナはうまくはぐらかして教えてくれなかった。

言いたくなかったのではなく、言えなかったんじゃないか。

やましい気持ちがあったから。

知ってしまった後、正直悶々とした。

パパ活なんて行為に安全はない。いつおかしなことをされても何も不思議ではない。

一刻も早くそんな行為をやめてほしいと思った。

だけど、『パパ活なんてやめなよ』と面と向かって言うことははばかられた。

エレナだってよくないと思いながらその行為を継続しているとなんとなく分かっていたから。

もしよかれと思ってしていれば堂々と『あたし、パパ活で稼いでる』と公言し、隣町でバイトをしていると嘘をつかなくてもよかったはずだ。

だから、あの日……薫子がパパ活の話題を出した時、あたしはあえて厳しい言葉でエレナを突き放した。

『そんなの嫌に決まってるでしょ。最低最悪な行為だし。そんなことする子とは友達にならないから。そもそもそうやって楽にあぶく銭を稼ごうっていう考えが無理。一刻も早くやめた方がいいと思う』

あの時のエレナの顔が脳にこびりついて離れない。


「だって今朝のニュースでやってたじゃない。男性と十代の女性がホテルの浴室で倒れていたって」

「うん。やってた。でも、それがパパ活かどうかなんてわからないでしょ?」

「そう?」

薫子は余裕気な表情を崩さない。
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