トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「あたしじゃないから……」

その声は惨めに震えている。

薫子は余裕そうな表情であたしのことを見下ろす。

その瞳はあたしのすべてを見透かしているようだった。

そんな視線に恐怖を感じる。

薫子からは逃げられない。言い訳をしたところで薫子はすべてを知っている。
直感的にそう感じた。

「あら、そう。まぁそんなことどうだっていいけど」

「お願い……。昔のこととか……黙ってて。みんなに言わないで……」

「さぁ?それはどうかしら。私の気分次第ね」

「お願いだから……――!!」

薫子にすがりつく。

こんなことをすればあたしが小銭を抜いている犯人だと自白しているようなもの。

だけど、薫子が黙っていてくれさえすれば誰にも秘密を握られることはない。

わらにもすがる思いだった。

「しょうがないわね。黙っていてあげる」

薫子は満足げに微笑む。

「ありがとう……」

あたしはホッとして薫子から手を離した。

その瞳の奥には薫子の大いなる企みが隠されているような気がする。

でも、今のあたしにはそれを深く考える余裕など残されてはいなかった。
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