トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「おはよう!」

登校するといつものように薫子に挨拶をされた。

「おはよう」

挨拶を返しながら席に着くと、薫子が振り返る。

大きくて真っ黒な瞳があたしを捕らえて離さない。

「ねぇ、どうして昨日先に帰っちゃったの?」

「え?どういう意味?」

思わず聞き返す。

あたしを非難しているかのような薫子のまなざしにたじろぐ。

「私と梨沙はもう親友でしょ?親友なら放課後は一緒に帰るのは当たり前だよ」

困惑と苛立ちを混ぜ合わせたような表情を浮かべる薫子に戸惑う。

「えっ、ちょっ、ちょっと待って?親友って……?」

「昨日約束したのにもう忘れちゃったの?梨沙って意外と薄情な子なんだね。ちょっと幻滅」

あ然とした。

昨日確かに『じゃあ、なってくれる?』とは聞かれた。

でも、あたしはそれに『YES』とも『NO』とも答えていない。

そもそも昨日まで挨拶程度の仲だった子に『親友になって』と頼まれてなれるものではない。

簡単に『じゃあ、親友になろう!』『今日からあたし達、親友ね!』って安易に答える方が薄情なはずだ。
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