トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「えっと、何か誤解してるみたいだけど、あたしの親友は彩乃とエレナなの。だから……」

薫子とは親友にはなれないよ。

そう答える前に、薫子があたしの言葉を遮った。

「――そうそう!私、梨沙の連絡先知らなかったの。今すぐ教えて!」

薫子はあたしの言葉を最後まで聞くことなくポケットからスマホを取り出した。

「ねぇ、あたしの話を……――」

「ほらっ、早くスマホ出して?朝のHRが始まっちゃう」

あたしの話に聞く耳を持たない薫子。

急かされて勢いでスマホを取り出してしまったことを今になって後悔する。

「う、うん……」

やっぱりエレナの言う通りだ。

薫子はちょっと変わってる。

人と人との距離感がうまくつかめない子なのかもしれない。

まさかここまでグイグイ系の子だとは思っていなかった。

大人しいけど挨拶も笑顔でしてくれるし、人当たりもいい子だと思っていたのに。

予想外すぎる薫子の態度に面食らう。

こういう性格だから友達ができないの……?

でも、もうすぐ席替えもするし、調理実習が終われば関わり合いもなくなるだろう。

「――梨沙、早く」

「うん。分かった」

しつこい薫子に根負けしてあたしは仕方なく連絡先を交換した。
< 19 / 221 >

この作品をシェア

pagetop