トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
けれど、すぐに返ってくると思っていたのに返信がない。

あたしが連絡をしたことで母は諦めたのかもしれない。

家に帰ってからあれこれ問い詰められ非難されけなされるのは間違いない。

でも、ずっと両親から逃げることはできない。

これでいい。これでよかったんだ。

自分を慰めながら他のメッセージにも目を通す。

「梨沙……」

梨沙からもメッセージが届いていた。

今の時刻は12時45分。

学校では昼休みの時間だ。

梨沙の言葉を最後まで聞かずに教室を飛び出してしまったことを今さらながら後悔する。

あたし、最低だ。

梨沙の言う通りエレナとは親友だった。

そんなエレナがパパ活をしていると知っていながらあたしはエレナを止めようとはしなかった。

『やめなよ』

そう言うことができなかった。

自分にも秘密があったから。

真緒という後輩をイジメて不登校にさせた過去が……。

その過去をエレナが知っていたとしても知らんぷりしていてほしかったから。

『後輩イジメなんてやめなよ』

そう言うのが友達であり、親友だ。

頭では分かっていても、理性が拒否する。

正論を振りかざしてそう言われたら嫌だったし、きっと反発しただろう。

何も知らないくせにそんなこと言うなって自分を正当化してエレナを責めただろう。

分かっていたから。そんなことしたらいけないって。

あたしはエレナの気持ちが痛いぐらいに分かった。

だから、言わなかった。言わない優しさもある……そう思っていたから。

だから――。

今さらそんなこと言っても全部言い訳になる。

今、エレナの状況はどうなっているんだろう。

意識は戻ったんだろうか。

目を覚ましてほしい。そして、謝りたい。

薫子の言葉をうのみにして酷いメッセージを送ってしまったことを心の底から謝罪したい。

あたしは梨沙からのメッセージを確認するためにスマホの画面をタップした。
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