トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
【梨沙:さっきのメッセージはバレー部の先生に伝えておくね。同じことをされる後輩が出ないように】

「……は?なに?なんで……?」

頭の中がパニック寸前になる。

梨沙ってばいったいどうしちゃったの……?

救急車が近くに停車し、救急隊員が飛び出してくる。

「傷病者発見!!」

「ちょっとどいてもらえる!?」

救急隊員が母の様子を確認している。

あたしはただその様子を震えながら見つめることしかできない。

その間も梨沙からのメッセージが止まらない。

【梨沙:怪文書は正しかったんだね。これも先生に真実だって報告した方がいいよね】

「やめて……」

思わず声が漏れた。

もうやめて。やめて。やめて。やめて。やめて。

【梨沙:彩乃が悪いんだからきちんと反省しないと】

そんなメッセージと同時に、救急隊員が暗い表情で互いの目を見合わせて首を横に振った。

死亡確認は医者でないとできないと何かで知っていた。

もう母の息はない。さっき白かった顔色は更に真っ白になっている。

あたしが殺したの?あたしが……あたしが母の手を振り払わなければこんなことにはならなかったのに。それなのに……――。

「やめて、やめて、やめて、やめて。いやぁあぁぁーーーーーー!!!!」

あたしは絶叫した。

何とか保っていた精神は限界に達し、我を忘れて叫ぶ。

今までの出来事が走馬灯のように蘇り、吐き気を催す。

全て終わった。もうバレーもしなくていい。練習だって。

両親からの圧力も感じずに済む。よかったじゃない。そうよ、これでよかったのよ。

殺しちゃったけど。あたしが、お母さんを。だけどしょうがないじゃない。

もう死んじゃったんだから。

しょうがない……?本当に?

支離滅裂な思考がグルグルと頭の中を回る。

顔が引きつる。喉の奥から込み上げてきたのは笑い声だった。

「あはは……。あはははは……!」

「ちょっ、君、大丈夫かい?」

ケラケラと笑うあたしを救急隊員が恐ろしいものでも見たかのように顔を歪める。

あたしは狂ったように笑った。

自分がどうして笑っているのかも、その止め方も分からない。

脳の一部がもはや正常に機能しなくなっていた。

「あはっ!あははははは!!!!」

笑い転げるあたしの足元のスマホは再び梨沙からのメッセージが届いたことを知らせるように画面を光らせた。
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