トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
昼休みになると、薫子はくるりと振り返って微笑んだ。
「今日は私もお弁当にしたの。梨沙と同じだよ」
バッグから取り出したお弁当の包みを見せると、私が言葉を発する前に薫子は自分の机を両手で掴み、ぐるりと回転させてあたしの机にピタリとくっつけた。
向かい合うようになるあたしと薫子。
一瞬、何が起きているのか理解できずに固まるあたしになんてお構いなしに薫子は嬉しそうにお弁当の包みを開けた。
「梨沙の今日のお弁当は何?私は卵焼きとウインナーと――」
「ちょ、ちょっと待って!」
「大丈夫よ。私は薄情者じゃないから、先に食べたりなんてしない。梨沙のこと待っててあげる」
「そうじゃなくて」
あたしが言いたいのはそう言うことじゃない。
思わず顔が引きつる。
「あたし、いつもエレナの席で3人で食べてるからここでは食べないよ?」
「今日からはここで食べましょう」
「ど、どうして?」
「だって私と梨沙は親友だから。親友なら一緒にお昼を食べるのは当たり前のことでしょ」
「でもさ、あたしの親友は――」
彩乃とエレナだから。
「親友って2人もいらないと思う。それに、あの二人は梨沙には合わないと思う。私だけで十分だから。梨沙だって本当はそう思ってるんでしょ?でも、二人に遠慮してるから私とは親友になれないって言ってるの。梨沙のそういう真っすぐで正義感の強いところ、好きよ?親友として誇らしく思うもの」
自分の言葉に満足げに微笑んだ薫子に頬が引きつる。
「それにね、私大人数で一緒にいるのって好きじゃないの。今日は2人だけで食べよう。梨沙がどうしてもって頼むなら明日は私が我慢してあげるから。私、それぐらいするわ」
あたしがどうしてもって頼むなら……?
どうしてそんなに上から目線で物を言うんだろう。
あたしの答えなんてまるで関係ないかのように自分だけで一方的に会話を進めてしまう薫子。
「ごめん。あたし、彩乃とエレナと3人で食べるから」
あたしはバッグから取り出したお弁当を胸に抱えると、薫子の顔を見ずに席を立った。