トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
悪いのはあたしではないのにどうして自分の気持ちを押し殺して生活しないといけないんだろう。

彩乃とエレナのことをいい友達であり、いい親友であると思い込もうと必死になった。

それはまるで自分自身に暗示をかけ続ける日々だった。

でも、結果はどうだ。

エレナの意識はあの事件から1か月経った今も戻っていない。

週刊誌やテレビで大々的に放送されることも少なくなっている。

ただ、ネットやSNSの世界だけは違う。エレナがパパ活をしていたと噂が立ち、その証拠を示すかのようにエレナの情報が流失して拡散された。

嘘か本当かは分からない。

同じ高校に通うという子が『派手なタイプだった』とか『男の人と歩いているところを見たことがある』とか様々な書き込みをして目も当てられない状況だった。

客観的に第三者の目としてエレナのことを考えたらやっぱりパパ活をしていたに違いないと悟った。

彩乃だって言っていた。

『こう言ったら可哀想かもしれないけど、そんなの自業自得じゃん。身から出た錆だよ。それに、あたし……エレナがパパ活やってたの知ってたし。いつかはこんな日が来るんじゃないかって思ってたもん』

あの時、あたしは彩乃のことを心底見損なった。

親友であるエレナが大変な時にエレナの悪口を言うことは人の道に反していると思ったからだ。

でも、もしエレナが本当にパパ活をしていたならエレナのことも許すことはできない。

パパ活なんて言い方は可愛いけれど、やっていることは売春だ。

彩乃が後輩イジメを認めるメッセージをあたしに送ってきたとき、今までの自分の中で抑え込んでいた何かがはじけ飛んだ気がした。

そんなことをしておいてよくものうのうと暮らせたものだ。

教室を飛び出していったあの日から彩乃が学校に姿を見せていない。

不慮の事故で母親を亡くしたショックで来られないのかもしれない。

学校から葬儀の連絡は来たけれど、あたしは参列しなかった。

あたしと薫子以外のクラスメイトは全員彩乃のお母さんの葬儀に参列したらしい。

『え……?梨沙、参列しないの?どうして?彩乃と親友だったじゃん』

クラスの一人にそう問われてあたしはこう答えた。

『後輩イジメなんて卑劣な行為をしていた彩乃はもうあたしの親友じゃないから』

クラスメイト達は何とも言えない表情を浮かべてあたしを見つめていた。

そして、その日からあたしはまた中学のようにクラス中から浮いた存在となってしまった。

エレナと彩乃という親友を失い、また中学と同じようにあたしはひとりぼっちになった。
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