トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「ただいま」
家に帰ると玄関先に見覚えのない男物の靴があった。
リビングの中にいたのは離婚して家を出て行ったはずの父だった。
「お父さんがどうしてここに?」
ここ数年間連絡を取り合うこともなかったのにどうして突然……?
「梨沙……。お母さんに話は聞いたよ。薬も飲んでいないし、症状が悪化してるんだって?昨日だって……お母さんに暴力を……」
母はソファに座ってうつろな表情で涙を流していた。
左目には眼帯をし、右目の上は大きく腫れてる。
髪は乱れ、頬は痩せこけている。
昨日、『薬を飲みなさい』とうるさい母にどうしても我慢がしきれず近くにあったテレビのリモコンで顔面を叩いてしまった。
故意にではない。脅しのはずだったのにたまたま母が動いたから顔に当たってしまったというだけ。
今の状況を瞬時に悟った。母が別れた父に助けてほしいと泣きついたのだ。
いまだに連絡を取り合う関係でいたなんて。
離婚したことで母はあたしだけのものになったはずなのに。
あたしは顔を歪めて父にこう言った。