トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「お父さん、違うの。それは誤解だよ。お母さんが最初に手を出してきたの。お父さんと別れてからずっとあたしお母さんに暴力振るわれてた。ほらっ、これだってそう。足にあざができてるでしょ?」
昨日たまたま机でぶつけてできたあざを見せる。
「どうして嘘をつくんだ」
「嘘じゃない。嘘をついてるのはお母さんだから。あたしじゃない」
「梨沙、もう全部分かってるんだ。前から母さんに相談されてリビングにカメラを設置していた。だから、お前がしてきたことは全て分かってる」
「か、カメラ?どうしてそんなものを?いくら家族でもプライバシーの侵害でしょ?そんなことしていいと思ってるの!?信じられない!盗撮されたって警察に言うから!」
「そんなことをしてもムダだよ。もう限界だ。幼稚園のときからおかしいと思ってた。苦情を言われたのも一度や二度じゃない。小学校の先生には『梨沙さんが虫を無慈悲に殺して笑っている』とか『みんなの関係を滅茶苦茶にする』って何度言われか……。まだあの頃は子供だったからと言い訳が出来たが今は違う」
「な、何言ってるの……?」
「父さんと母さんの離婚にも理由がある。お前は……自分だけを見てくれる人が欲しかった。自分だけを見てくれて、優しくしてくれて、自分のことを理解してくれる存在が欲しかった。お前は誰か一人から独占的な愛が欲しかった。だから、父さんと母さんが離婚するように仕向けて嘘をついた」
「……嘘って?」
「父さんは浮気なんてしていないし、母さんはブランド物のバッグを隠して買ったりもしていない。お前が言っていることのほとんどが妄想だ。妄想や嘘を口に出してさもそれが真実であるかのように言う。そして関係を壊そうとする。僕たちは親だから、お前が嘘をついているのはすぐにわかったよ。だから、別れることにした。お前は自分の想い通りにならないと何をしでかすか分からないからだ」
「な……!嘘なんかじゃない!」
あたしは父の腕をギュッと掴んだ。
「……離しなさい」
父は嫌悪感丸出しの表情を浮かべると、あたしの腕を払った。
「お前の学校で……仲の良かった友達が何人か不幸な目にあっているのは知っている。
それはきっと偶然なんかじゃない。必然だ。中学の時もお前に関わった人間が何人もひどい目にあっている」
「やめてよ……!あたしは二人に何もしていない!あたしは二人のことを親友だって思っていたんだから。本当だよ!?」
「梨沙、もうここまでだよ。もうすべて終わりにしよう。もっと早くこうすればよかったんだ。3人で死のう」
父はそう言うと、スーツのポケットから取り出した紐を両手で握り締めた。
サーッと顔から血の気が引いていき、思わず後ずさりする。