トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
やってしまった……。あたし、なんてことを……!!!
「いや、いや、いや……なんでよ!!なんでこんなことに……!!」
家を飛び出して道路の真ん中で絶叫するあたしを通行人が恐ろしいものでも見たかのような視線をこちらに向ける。
恐ろしかった。父の顔面を傘で突いた時のあの感触をいまだに手のひらが覚えている。
体中がブルブルと震える。
誰か助けて……。誰か……誰か……。
あたしはとっさにスマホを取り出した。
【michiお願い、あたしを助けて!】
返信はすぐにきた。頼れる人はもうmichiしかいなかった。
【michi:何があったんですか?】
【親のことを傷付けちゃった】
【michi:今どこですか?】
【家の近く】
【michi:今すぐ駆け付けたいんですが少し時間がかかります。20時に待ち合わせしませんか?】
【いいよ、どこで?】
【michi:駅東口にある公園はどうですか?さりさんの家から近いですよね?】
【そこまで来てくれるの?】
【michi:もちろんです。だってさりさんは私の恩人だから】
【ありがとう、michi。待ってるね】
【michi:ではまたあとで】
michiと会うのは初めてだ。michiは奇跡的に家が近いことがメッセージのやり取りでわかった。
やっぱりmichiとあたしは出会うべくして出会う運命だったんだ。
Michiとやり取りしたことで少しだけ落ち着くことができた。
大丈夫。確かに父にケガをさせてしまったことは悪いことだけど、父が最初にあたしを殺そうとしてきたんだから。これは正当防衛になるだろう。
父は娘であるあたしを殺そうとしたのだ。
母だってきっとこれで目を覚ましてくれるだろう。
警察に事情を聴かれたらありのままを話せばいい。そうすればきっと何もかもが丸く収まるだろう。
大丈夫、あたしは悪いことなどしていない。
michiとの約束の時間になる前にあたしは待ち合わせ場所へ向かい、ベンチに腰かけた。
michiはどんな子なんだろう。
声を聞いたことも会ったこともないけれど、メッセージは数えきれないほど交換し合った。
心の内をmichiになら話せた。
辺りはもう真っ暗だ。約束の時間まであと数分というところで前方から誰かがこちらに向かって歩み寄ってきたの気が付いた。
あたしはベンチから立ち上がり、michiと思われる人を待った。
「michi……?」
ようやく会える。あたしのことを理解してくれる人に……。
恐る恐るそう声をかけた瞬間、あたしは戦慄した。