トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「私に妹がいるっていう話はしたでしょ?その妹、道子っていうの。梨沙、覚えていない?塾が一緒だったはずなんだけど」

「道子……?」

頬がピクリと引きつる。

覚えている。あの子だ。あたしがポーチを盗んだと言ったせいで塾を辞めた一つ年下の女の子。

あの子が薫子の妹……?

まさかそんな繋がりがあるなんて思ってもみなかった。

「その顔、思い出してくれたみたいね。道子がね、教えてくれたの。『私の塾にお姉ちゃんと気が合いそうな先輩がいるよ』って」

「え?」

「それが梨沙。『正義感が強くて真っすぐな人』ってよく道子が言っていたわ。道子にも色々よくしてくれたんでしょ?ありがとう。道子は私と梨沙ならきっと親友になれるっていつも言っていたわ。塾が終わって家に帰ってくるといつも楽しそうに梨沙の話をしてくれたのよ」

頬が引きつる。どういうこと……?あたし、あの子……道子としゃべったことなんて一度もない。

強烈な違和感にうまく言葉が出てこない。

「そのあと、梨沙にも私のことを話したって道子が教えてくれたの。『私のお姉ちゃんって梨沙先輩とそっくりなんです』って伝えたら梨沙がこう言ってくれたって。『あたし、道子ちゃんのお姉ちゃんと親友になりたい』って」

照れ臭そうに頬を両手で押さえてはにかむ薫子に唖然とする。

「私、嬉しかったの。中学では友達だって一人もいなかったから。私のことを理解して親友になりたいなんて言ってくれたのは梨沙が初めてだったから」

「ま、待って……。今の話、なに?あたし、そもそも薫子の妹と話したことなんてないよ?」

「いいのよ、照れなくて。道子にも聞いてるから。梨沙が意外に照れ屋だってこと」

「ち、違う!」

薫子は一体何の話をしているの……?
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