トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
【薫子:まだ?】

【薫子:連絡して】

【薫子:ねぇ】

【薫子:疲れちゃった】

【薫子:まだ終わらない?】

「なにこれ……何なの……」

背筋がゾッとする。

未読のままにしてあるにも関わらず、薫子はあたしの都合なんてお構いなしに一方的にメッセージを送り続けている。

今日がボランティアだと薫子には伝えていない。

でも、予定があるということは伝えてある。

それなのにどうしてこうやってメッセージを送りつけ、返信を急かすんだろう。

普通は相手に予定があれば返信だってできないかもしれないって思うはずなのに。

それなのに。

「あの子……おかしい……」

ポツリと呟き、エレナと彩乃のグループメッセージを確認する。

【彩乃:もう部活終わった~!今着替え中。どこのファミレス行けばいい?】

【エレナ:あたしもいつでも行けるよ!駅前のいつものファミレスは?】

【彩乃:OK!梨沙はまだ終わってないかな?】

メッセージのやり取りはちょうど3分前。

今から駅前のファミレスに行けば二人とうまく合流できそうだ。

【今ボランティア終わったから】

「これから、向かうね……」

口に出しながらスマホの画面をタップして文字を打つ。

すると、施設の入り口付近からこちらに歩み寄ってくる黒い影に気が付いた。

「遅かったね。私、もう待ちくたびれちゃった」

喉の奥がひゅっと縮こまる。

あまりの驚きに声を出すことができない。

現れたのは薫子だった。

平然とあたしの前まで歩み寄り、薫子は平然とこう言ってのけた。

「でも、予定があるっていうのは嘘じゃなかったんだねっ!しょうがないから今日だけは特別に許してあげる!」

ニコリとやわらかい笑みを浮かべている薫子に全身が震える。
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