トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
……最悪だ。
彩乃とエレナと会って3人で話すのを心待ちにしていたのに、どうして今、あたしの隣には薫子がいるんだろう。
「それでね、この間は予備校の先生がね――」
薫子のマシンガントークは止まらない。
家へ帰る道中、薫子は当たり前のようにあたしにぴったりとくっついて歩き出した。
正直、精神的に疲れていた。
体も泥のように重たいし、食欲すらわいてこない。
頭がひどく痛む。
今すぐ自分の部屋に入り、ベッドにもぐりこみ寝てしまいたい。
嫌なことがあったときは寝るに限る。
「へぇ、そうなんだ……」
薫子の話を右から左に聞き流しながら歩く。
適当に相槌を打っているにも関わらず薫子はお構いなくしゃべり続ける。
相槌をやめると、『梨沙はどうして私の話を聞いてくれないの?私が嫌いだから?』とめんどくさいことを言い出す。
ああ、いやだ。うんざりする。
予備校の話や彼氏の話。
それから自分が子供の頃の話。
どうでもいい話の連続に心の中でため息をつく。
もっとハッキリと言わないといけないのかもしれない。
例え薫子を傷付けたとしても、嫌なことは嫌だともっと主張しなければ薫子のペースに巻き込まれてさらに嫌な思いをすることになる。
その証拠に今、あたしは心底疲れて果てている。
薫子の存在が今は嫌で嫌でたまらない。
あまりのストレスに頭痛が激しくなる。
一刻も早く家に帰って薬が飲みたい。
「あっ……」
ぼんやりと歩き続けているうちにようやく家が見えてきた。
よかった。これで解放される……。
「うち、ここだから。じゃあね」
「ここが梨沙の家なんだ。結構いい家だね」
薫子はうちを見上げてポツリとそう漏らす。
結構って言うのは余計だ。
でも、言い返す気力など残っていない。
「じゃあ」
どうして薫子がうちの家まで着いてきたのかなんてもうどうだってよかった。
とにかく、薫子から解放されたい。その一心だった。
玄関のドアを開けると、気持ちがスーッと軽くなる。
あたしは重たい体を引きずりながら家の中に足を踏み入れた。