トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
『あの子……どういうつもりなんだろ』

電話越しのエレナがごくりと唾を飲みこんだのがわかった。

『よく分からないけど、梨沙にすごい執着してるよね?どうしてだろう』

確かに彩乃の言う通り、薫子はあたしにだけ執着している。

その理由はいったいなに……?

思い当たるとしたら……。

『調理実習の班決めの前までは挨拶程度しか話したことがなかったの。もしかしたら……あたしが一緒の班になろうって誘ったからかも』

『でもさ、それだけであんなに執着するかな……?』

『わかんないけど、そうとしか思えない』

『梨沙が昔あの子と関わったことがあるとか……そういうこともないの?』

『まさか!あんな強烈な子がいたら覚えてるよ』

『だよねぇ』

ハァとため息をつく。

3人で会って話すこともできず、こうやってコソコソと電話でしかやりとりができないなんて……。

『梨沙、あんまり深く考えすぎないほうがいいよ?とりあえず、明日もしまた薫子が梨沙にしつこくしてくるようだったらあたしとエレナで言うよ。ねっ、エレナ?』

『うん。薫子のことはうちらに任せてよ?大丈夫だから』

『二人とも……ありがとう……』

なんだか胸がいっぱいになり、思わず涙が溢れた。

彩乃とエレナっていう親友がいるおかげで心強い。

ほんの少しだけ気持ちが軽くなった。

あたしも毅然とした態度で薫子に接しなければいけない。

濁した言い方ではあの子には伝わらない。

でも……――。

悶々とした気持ちをぶつけるためにベッドの上の複数のクッションを手上がり次第に投げる。

「もう……何よ……何なのよ、あの子!!」


ベッドの上で頭を抱えていると、トントンっと部屋の扉をノックされた。

「り、梨沙……、どうしたの?大丈夫?」

母の心配そうな声が扉越しに聞こえてきた。

「……何でもない」

「そう?それならいいけど……」

母が階段を降りていく音が妙に耳障りであたしは再び拾い上げたクッションを壁に投げつけた。
< 36 / 221 >

この作品をシェア

pagetop