トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「梨沙が気にする必要はないよ。薫子の行動は目に余るものがあったし」

「そうそう。うちらだって別にイジメたりハブったりしたわけじゃないし。薫子が自分から離れていっただもん。しょうがないよ」

彩乃とエレナはそう言ってあたしを励ましてくれた。

「そう……だね」

そう答えながら薫子に視線を向ける。

周りを特に気にする様子もなく黙々とお弁当を食べる薫子の姿に少しだけ胸が痛む。

『私はね、親友がいないの。ううん、それどころか友達もいない』

薫子は以前そう言っていた。

不器用な子なのかもしれない。

なかなか友達ができずに焦っていた薫子はあたし達とのキッカケが出来たことに喜び、浮かれて暴走してしまった。

友達との距離感が分からなかったせいでこんなことになってしまっているんだとしたら少し可哀想だ。

それに、これから先も心配だ。

これじゃ、親友はおろか友達だってできないだろう。

あんなことをされたら誰だって彼女から離れていくに違いない。

あの子にも誰か彼女の行動をいさめて忠告してくれる人が必要だ。

調理実習は薫子と同じ班だし、そのときは4人で楽しく過ごそう。

平穏が訪れたと感じた瞬間、あたしの心に余裕が生まれた。

その余裕が危機感を失わせていたことにあたしはまだ気付いていなかった。
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