トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
放課後。
「ねぇねぇ、ちょっと気が早いけどゴールデンウィーク3人でどっかいきたくない?」
下校途中、エレナがそう切り出した。
バレーボール部に入っている彩乃は放課後部活があり、帰宅部のあたし達と一緒に帰ることができない。
普段は今のようにエレナと一緒に帰宅するのが日課になっていた。
「あっ、いいね!あたしもどっか行きたい!」
「だよね!でも、彩乃は部活があるし厳しいかな?」
「そうだね……。その時期ってちょうど地区大会とかあるんじゃなかったっけ?練習があったら休めないよねぇ」
うちの高校はバレーに力を入れている。
スポーツ推薦で入学した彩乃は1年生からレギュラーで今後の活躍を期待されているだけに、練習を休むことなんてできるはずもない。
それに休んでもらいたくない。
一生懸命バレーを頑張る彩乃を親友のあたしもエレナも心から応援していたから。
「とりあえず、うちらだけで決めちゃうのも悪いし彩乃に一回予定聞いてみようか。もし部活があるようだったら、夕方から少しだけでも3人で会って遊びたいし」
「うん。あたしもそれが良いと思う」
「ありがとう、梨沙」
エレナのこういうところが好きだ。
彩乃だけを仲間外れにしたりしないし、いつだって気にかけてあげている。
あたしが中学時代はエレナのような派手な1軍タイプの子とはあまり親しくなれなかった。
教室内でも目立つ容姿のエレナ。胸まである黒髪を緩く巻いて最新のメイクを施している。
雑誌に出てくるモデルさんのように手足も長くて顔も頭も小さい。
骨格レベルであたしとは雲泥の差。
カタカナの【エレナ】という名前もエレナならば名前負けしない。
笑うとクシャッとなる顔が小動物みたいでとにかく可愛い。
自慢の親友だと胸を張って言える。
「あっ、ゴールデンウィーク中、もし試合があるなら応援しに行こうか?」
「それいいかも!」
あたしとエレナはなんて事のない会話に花を咲かせながら歩いた。
こんな日常がこれから先もずっと続いていく。
この頃のあたしはそう信じて疑わなかった。