トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
結局、調理実習どころではなくなってしまった。

「苦しい……苦しいんです……」

泣きすぎて過呼吸のようになってしまい苦し気に顔をゆがませた薫子は先生に付き添われて保健室へ向かった。

その間に呼ばれてやってきた担任にあたし達は別室に連れていかれて事情を聴かれた。

どうしてこんなことになってしまったのかと聞かれても答えられない。

あたし達は薫子を仲間外れになんてしていないし、薫子が勝手に仲間外れにされたと騒いでいるだけ。

そもそもこれは薫子の逆恨み以外の何物でもない。

さっきの薫子の言葉からもそれが伝わってきた。

結局薫子は、自分が作ってきた分担や工程にあたし達3人が従わなかったことが気にくわないのだ。

自分の意見が通らなかったから嘘をついてあんな大袈裟な芝居までした。

まるで駄々をこねている子供だ。

「あたし達は薫子を仲間外れにしたりしていません。まして、やっちゃダメとか3人でやりたいなんて言ってませんから」

「うーん」

彩乃の言葉に担任は考え込んだ。

あたし達が薫子を仲間外れにしていないという証明なんてできない。

全くないことを証明することは不可能に近い。

これじゃ悪魔の証明だ。

あることを証明することはできる。

でも、ないことを証明することは難しい。

「後で葛生さんからも話は聞いてみるわ。でも、火のないところに煙は立たないって言うでしょう?自分たちの行動もきちんと考えてみる必要があるわね」

結局、薫子が被害者であたし達が加害者の構図が出来上がっている。

泣いた方の勝ちってこと?

あたし達は薫子を仲間はずれにもしていないし、調理実習に参加するなとも仲良し3人でやるとも言っていない。

嘘をついているのは薫子だ。

キュッと唇を噛みしめる。

あの子の考えていることが全く分からない。

とにかく、あの子とは距離を置こう。

あの子は危険だ。

あたしはそう心に誓った。
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