トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「――こんにちは」

すると、背後で誰かの声がした。

その声に聞き覚えがあった。

ゆっくりと振り返る。

その先にいたのは笑顔を浮かべた薫子だった。

「……どうして……」

思わず口からそんな言葉が漏れた。

不幸中の幸いか沖さんには聞こえなかったようだ。

「あっ、こんにちは。あなたが電話をくれた葛生さんね?葛生薫子さん」

「はい。よろしくお願いします」

柔らかい笑みを浮かべる薫子にぞっとする。

ねぇ、薫子。一体どういうつもり……?

どうしてボランティアなんて始めようと思ったの?

偶然だとはとても思えない。

だって、薫子はあたしがこの施設に出入りすることを知っている。

顔が引きつる。

沖さんと薫子が目の前でしゃべっているのに内容が全く頭に入ってこない。
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