トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「梨沙ちゃ……梨沙ちゃん?」

何度か名前を呼ばれてハッとする。

「どうしたの?考え事?」

「すみません。何でもありません」

笑顔を浮かべようとしてもぎこちない笑みになる。

すると、薫子があたしを見つめて微笑んだ。

天使のような綺麗な笑みを浮かべる薫子。

「あたしも梨沙と同じボランティアをやろうと思って。ナイショにしててごめんね?驚いた?」

ふふっと楽し気に笑う薫子に開いた口がふさがらない。

「どうして急に……」

薫子とあたしの会話を聞いていた沖さんが不思議そうに「知り合いだったの?」と尋ねた。

「はい。あたしと梨沙って親友なんです。ねっ、梨沙?」

何を言っているの……?

親友?一体誰と誰が親友なの?

今日の調理実習の件であたしや彩乃やエレナはあらぬ誤解をかけられて、先生に疑われて心底嫌な思いをしたっていうのに。

そうなるように仕向けたのは薫子でしょ?

それなのに、あたしと薫子が親友?

どうしてそんなことを言えるのか全く理解できない。

「実は、あたし梨沙に誘われてボランティアやってみようって決めたんです!ボランティアの話梨沙に色々聞いて興味が湧いちゃって」

薫子の言葉に沖さんが目を輝かせる。

「梨沙ちゃん、そうだったの?お友達を誘ってくれてありがとう」

お礼を言われても苦笑いを返すことしかできない。

だって、あたしは薫子をボランティアに誘った覚えはないし、ボランティアの話もしたことがない。
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