トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「とりあえず、しばらくは我慢して仲間に入れよう。周りの子達にもうまくやってるって思わせるの」

「それで……?」

「仲良くしてたと思わせておいてこっぴどく裏切って傷付けてやろうよ」

「それいいかも。やられっぱなしなんてムカつくしね」

エレナと彩乃が意気投合する。

「夜、どっかに呼び出してそこに置き去りとか、どう?」

「いいね。それか、高級なお店予約させてバックレとか」

「あはは!それもいいかも。薫子、アイツどんな顔するかな」

「でもさ、薫子……何するか分からない怖さがあるよ。冗談も通じなそうだし仲良しの振りなんてしたら後戻りできなくなりそうだしやめた方がいいと思う」

ちょっとお仕置き程度にやり返しても、きっと何の解決にもならないだろう。

渋るあたしに二人は笑顔を浮かべる。

それに、いくら薫子が悪くてもそんなことをしたらイジメになってしまう。

「大丈夫だって。ずっと我慢してたけどもう限界!気付かれないようにちょこちょこ嫌がらせしよっ!」

「いいね~!まず何やる?とりあえず、物隠す?」

「そうだね。最初やるならそれぐらいかな」

タガが外れたように二人はあれこれと薫子への嫌がらせの作戦を立てる。

「靴隠しちゃう?」

彩乃の言葉にエレナが首を横に振る。

「それじゃ甘すぎ。上履きもでしょ?」

「隠すっていうかトイレの便器にでもぶち込む?」

「あはは!それいいかも。どんな顔するか見ものだね~!」

今まであたし達3人の中で誰かの悪口を言い合ったことはなかった。

薫子の愚痴を3人で言い合ったことはある。

でも、まだあれは愚痴の範疇に収まっていた。

彩乃もエレナも人が変わったみたいに薫子をどうやったら傷付けられるのかに頭を悩ませている。

楽し気に話す二人に胸の奥底がザワザワと不快な音を立てる。

二人のことを心の底から尊敬していたし、信頼もしていた。

でも、なぜだろう。その尊敬も信頼も信用も少しずつだけど崩れてきている。

まるで砂の城みたいに。

あたしは黙って二人の話に耳を傾け続けた。
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