トモダチ地獄~狂気の仲良しごっこ~
「私、もっともっと梨沙と仲良くなりたい。みんなに親友なんだって胸を張れって言えるぐらいに」

「え……?」

また親友とか……そういう話?

聞こえていないふりをしてやり過ごそうとするものの、薫子の言葉は止まらない。

「梨沙もそうでしょ?私と親友になりたいと思ってくれてるでしょ?」

「それは……」

「言ってよ。親友になりたいって。ほらっ、照れなくてもいいんだから。ねっ、早く」

「親友とか……そんなの口に出して言うの……恥ずかしいって」

「どうして?どうして言ってくれないの?私はこんなに梨沙を思ってるのに、どうして梨沙は私の欲しい言葉をくれないの?ねぇ、なんで?」

「あっ、急がないと購買のパン売り切れちゃうよ!薫子、走ろう!」

何とか必死に誤魔化したものの、薫子は不服気な表情を浮かべたままじっとあたしのことを見ている。

「私と梨沙は親友になれるはずよ。だって、私たちはそっくりだもん」

「え……?」

「梨沙は私のこと自己中だって思ってる?言いたいことを我慢せずに言うから」

あたしと薫子が似てる?なにそれ。顔?それとも性格?

勝手なこと言わないで。

あたしと薫子は似ても似つかない。

「梨沙だってそうでしょ?言いたいこと、ハッキリ言うじゃない?」

見透かしたような真っ黒い瞳に頬が引きつる。

ドクンっと心臓が震える。何言ってるの……?一体何を?

「な、何の話……?ほらっ、早く行こう!!」

あたしは薫子の腕を引っ張り、購買を目指した。
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